劇団はぐるま座
長門市油谷
龍雲寺 盂蘭盆会・戦後80年全戦没者追悼法要
『原子雲の下からあなたへ』を上演
2025.7.27
長門市油谷にある龍雲寺(長岡裕之住職)で7月27日(日)、「孟蘭盆会・終戦八〇年全戦没者追悼法要」がおこなわれ、朗読劇『原子雲の下からあなたへ―峠三吉と子どもの詩』を上演し、門徒を中心にした数十名の人々が真剣に舞台に見入られました。
五年ごしに念願叶い上演が実現
まずはじめに、法要・読経がおこなわれ、つづいて長岡住職があいさつされました。
「毎年、夏法会で『全戦没者追悼法要』をつとめてきたが、今年はとりわけ戦後80年という節目の年になるので、下関の劇団はぐるま座に上演していただくことになった。昨日NHKの番組で『はだしのゲン』をアメリカに持っていき、翻訳して広めた取り組みについてやっていた。最初からすんなりとはいかず、アメリカ人からは〝パールハーバーの天罰が下ったんだ〟〝日本が戦争をやめないから、戦争を終わらせるために原爆を投下したんだ〟などと散々に言われる。しかしその後、英語版につづき世界各国の言葉に翻訳されるなか、原爆の悲惨さが徐々に世界にも伝わり、原子爆弾や核爆弾に対する反対運動が世界中に広がりつつあるそうだ」と紹介。
また、「日本被団協という団体の宣言文の中に〝かくて私たちは自らを救うとともに、私たちの体験をとおして人類の危機を救おうと決意を誓いあった〟という一文がある。あの方たちも原爆で大変な被害に遭われ、大変な苦労をされ、会を設立されたが、それは自分たちだけのためではなく、人類の危機のためであった。人類が、地球が何十回も破滅してしまうような恐ろしい武器を持った現在、二度と自分たちのような苦しみを他の人にさせないためにと。今日上演してもらう作品は、峠三吉さんの詩などで構成されている。〝ちちをかえせ ははをかえせ…〟という有名な詩を書かれた人だ。自分自身も被爆しながらたくさんの詩を書き、当時の子どもたちにも詩を書かせている。それをもとにはぐるま座が劇をこしらえて下さった。実は5年前に上演を予定していたが、コロナでできなくなり、念願叶ってようやく本日を迎えることができた」と語られました。
続いて「10年ほど前の夏、新聞を読んでいて目に留まった
詩がある」として、全日本俳句大賞の受賞作品なかから、と
くに印象に残っている「母と子の 同じ命日 原爆忌」とい
う句に触れ、「広島のあるお寺で聞いた話だが」と前置きし
て、夏になると毎年〝仏様に〟と花を持って来られるご門徒
の高齢男性のことを紹介。
ある時、そのご住職が男性に〝なぜですか?〟と尋ねると、
「私も原爆に遭っている。あの悲惨な惨状を目の当たりにし
ている。海軍兵学校にいたところ原爆が投下され救援に入っ
たが、広島は全て焼き尽くされ、累々とした死体の山だった。
その処理にあたったが手厚く葬るすべはなく、死体を集め重油をかけて焼くのみだった。遺体を集めるなか、目に留まったのがお腹の下に何かを抱えるようにしている遺体だった。爆心地に近く熱線で黒焦げとなった遺体は男女の区別もつかない。そっと遺体を起こして見ると、その下には赤ちゃんがいた。すでに息絶えていた。上に覆いかぶさっていたのは母親だったのだ。熱線の瞬間、赤ちゃんに覆いかぶさったのだろう。遺体に涙するとともに、自らを投げ出し我が子を救おうとしたその姿に仏を見た。花を手向けたいと思うが、周囲は焼き尽くされ、花など無かった。それ以来ずっと花を手向けたいと思っており、退職を機に花作りを始め、夏になるとお寺に届けるようになった……」。
「何もかもを焼き尽くす原子爆弾。多くの人が亡くなり幸い生き残った方も、その後、原爆症や差別に苦しめられた。合わせて二一万人もの人がその年のうちに亡くなられたと聞く。今日は、はぐるま座が当時の映像を交えながら上演してくれる。最後までどうぞご覧ください」と語りかけました。
皆の力を合せ平和な世界を
開幕音楽が流れ出すと、会場となった本堂は水を打ったような静けさのなか、身じろぎもせず舞台に見入る人々の真剣な空気に包まれ、約一時間の上演が終わると客席からは温かい拍手が送られました。
終演後、長岡住職は「戦争を体験した方たちは皆〝絶対に戦争はだめだ〟と言われたが、そのような体験者が高齢となり急速に減っていくなかで、次の世代の私たちの振る舞いが大事になってくる。日本は何とか八〇年の間戦争を起こさず、加担もしなかった。これは先の戦争を体験した方々の存在と同時に、平和憲法の存在も大きかったのではないかと思う。しかし、今この二つが揺らいでいる。戦争を知らない世代が改憲を進めようとしている」「ウクライナやガザの様子を見た中国が、自分たちも戦争を起こしても良いのだとならない様に、世界の指導者にはしっかりしてもらいたい。南西諸島では台湾有事が起きた際の住民の避難先に、九州・山口が指定されていると聞き、そこまで話が行っているのかと恐ろしい思いがする」と述べ、「平和は日本だけでは成り立たない。世界の平和があって日本の平和がある。私たちは微力ながらでも世界に働きかけていかないといけない。〝微力〟は〝無力〟ではない。皆の力を合わせて行けば力になる。はぐるま座はこれからも下関を拠点に演劇公演を続けて行ってくれる。いつか長門でも上演して欲しい。皆さん、はぐるま座の公演を見かけたら、ぜひ観に行って欲しい」と呼びかけて、全戦没者追悼法要を締めくられました。
長岡住職からは「〝菩薩〟とは〝大乗仏教〟であり、菩薩は自己と他人の幸せを分けない。自己の利益、幸せのみを願うのでは〝小乗仏教〟になってしまう。しかし、分かっていても関わって迷惑を被りたくない…と、社会問題や平和問題について関わりを避ける空気もある。だが今こそ、宗教者がもっと平和のために行動していかないといけない時期だと思う。ぜひ頑張っていただきたい」と激励をいただきました。
終演後にご住職からご挨拶
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