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 朗読と音楽と映像による構成 峠三吉と子どもの詩 ~原子雲の下から立ち上がるすべての人々の渾身の言葉~

 劇団はぐるま座は一昨年から、広島を代表する原爆詩人・峠三吉と戦後7年目に広島の子どもたちが綴った詩の世界を、朗読と映像・音楽で構成した小作品の上演を開始し、これまでに、広島、長崎、沖縄、島根県内の小中学校や市民センターなどで上演してきました。

 

 そのなかで「戦争は人権侵害の最たるものだが、日日忙しいなかで考えることはほぼない。こういう内容に触れることは、私たちにとっても子どもたちにとってもとても大事だ」(学校長)、「父は戦地に行き、母と子、年寄りなど弱い立場の人たちがどんなに怖かったろうと考えさせられた。目の前で苦しんで死んでいく子や親を見なくてはいけなかった現状を自分に置きかえた時に、心に刺さり涙が出た。怖くても辛くても、伝えていかなくてはいけないことだと感じる機会になった」(保護者)などの感想とともに、〝今の時代だからこそ、多くの若い世代や子どもたちにぜひとも鑑賞して欲しい〟との要望が寄せられてきました。

 戦後74年が経ち、被爆者や戦争体験者の高齢化の進行するなかで、被爆や戦争の実相を次世代へ継承していくことは大きな課題となっており、そのような要望に応えていくための作品として本格的な舞台化にとりくみました。昨年からの公演の反響をもとに台本を検討し、音楽も新たに創作して、語りと音楽と映像でおりなす本格的な公演レパートリーとして構成しています。

 

『峠三吉と子どもの詩』公開稽古を開催

 

 7月14日(日)、下関市の劇団はぐるま座稽古場で、朗読と映像・音楽による構成『峠三吉と子どもの詩』の公開稽古を開催しました。

 あいにくの雨模様にもかかわらず、戦争や原爆の体験者をはじめ、教育関係者や自営業者、会社員、音楽や美術、剣詩舞の関係者などの劇団支持者の他、本部・稽古場のある武久町内の住民も多数参加し、20代から80代の約50名が駆けつけ、終演後の感想・意見交流では、劇団はぐるま座が市民のなかに根をはり、各地に渦巻く戦争反対の世論を代表し、被爆者や戦争体験者、多くの人人の声なき声を形にして全国に発信していく活動への熱い期待が寄せられました。

 

 『峠三吉と子どもの詩』は、峠三吉の「序」「八月六日」「墓標」などの詩をもとに、当時の広島の子どもたちが綴った詩や作文を盛り込んだもの。広島市民がもっとも活動する、狙いすました時間に原爆が投下された状況を怒りをこめて告発した「すべての声は訴える」(峠三吉)をベースにして、アメリカが日本を単独占領するために周到に計画されていたことを朗読を通して浮き彫りにした。そして、当時の小中学生が書いた詩九編を朗読し、原子雲の下にいた被爆市民が親兄弟を殺され原爆症に苦しみながら、どのように生き抜いてきたかを映像や音楽と寸劇を交えた約五〇分間の上演。

 涙をぬぐう参観者が多数見られる中、上演後に約一時間にわたっておこなわれた感想・意見交流では、通し稽古を観たの感想とともに、劇団に対する要望や期待の意見も多数寄せられました。

 

 「以前、中学校で礒永秀雄さんの詩の朗読に触れた生徒が、〝今の自分たちがあるのは、戦争経験者の苦労があるからだ〟という感想を持った。峠三吉さんの詩も子どもたちに伝わるものがあると思う。今回の公開稽古のように市民と直接交流しながら新しい劇団活動をつくっていく人民劇団としての方向に期待し、私たちも支えていきたい」とのべた。

 武久町の近所の住民の方々からは、「子どもたちも戦争は遠い昔のことだと思っていると思う。学校でもなかなか教えられない。教育の一環として教育現場を回って公演してほしい」(男性)、「内容もよかったが、一つ一つの言葉がはっきりしていて詩の内容が響いてきた。広島には何度も足を運び原爆ドームにも何回も行ったが、今日の作品を見て心打たれる場面、ちょっと涙が出る場面もあった。ぜひ子どもたちに伝えて欲しい。教育の場でやってほしい」(女性)と期待を寄せた。

 

 また地域住民の女性は、「原爆のとき私は小学生だった。夏休みでも学校に行き、校庭を回っていたらピカッと光った。防空壕に逃げ込み、しばらくして出てみると校舎のガラスが割れ、広島の空が真っ赤だった。学校帰りに全身ずるむけになった真っ黒の人たちが行列をなしているのを見た。翌日、教室は負傷者でいっぱいで私たちはその人たちの手伝いをしたことを覚えている。暑くて窓からハエが入ってきて負傷者にたかり、床は人間の体液でずるっとしていた。今日、詩の朗読を聞きながらその情景が思い浮かんだ。私たちのような何もできない声なき声をぜひ伝えて欲しい」と語りかけた。

 

 30代の男性(看護師)は、感極まった様子で「戦争については修学旅行で広島、長崎に行ったが内容はあまり残っていない。だから学校行事などでぜひこの公演できるようにしてほしい。当時の小・中学生があのような詩を書かなければならない現状があった。子どもの詩は今の子どもたちの心に響くのではないか」と言葉を詰まらせ、20代の男性(介護士)は「僕自身が、峠三吉さんのことを初めて知り、詩を通じて当時の人たちの気持ちを学ぶことができた。当時の小・中学生の詩は子どもたちにとってメッセージ性が強いと思う」と語った。

 福岡で音楽活動をしている男性は、「かつて広島県福山市に住んでいて被爆者と接することもあったが、原爆が投下された時間が狙いすました時間だったことを今日初めて知った。私は介護業界にも少し携わっていたが、人間のコミュニケーションは言葉三割、身振り手振りなども含めて表情六、七割だ」とのべ、「表現の世界に完成はないが、さらに詩の朗読を工夫し、被爆者の思いがより伝わるようにしてほしい」と要望をのべた。

 『峠三吉と子どもの詩』は7月26日(金)13時30分から、岡山県笠岡市の笠岡市民会館で開催される「第32回笠岡市平和祭」で上演され、確かな反響を得ました。劇団では、今後もこのような形態での公開稽古や交流の場を儲け、来年の戦後75年に向けて内容や構成をより練り上げていこうと話し合っています。

 

 

 

 

 

第32回笠岡市平和祭で手話通訳を交えての上演(2019年7月)

劇団はぐるま座

〒751-0833 山口県下関市武久町2-61-10

TEL 083-254-0516  FAX 083-252-5964

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