青少年の生きる力を励ます礒永童話
昨今の情報化社会のなかでスマートフォンの普及などにより、文字で会話をすることが増え、表情から感情を汲みとることやコミュニケーション力、感動体験などが経験的に少なくなっています。また、家庭の経済環境の悪化など子供たちを取り巻く環境も年々深刻さを増しています。
礒永秀雄の詩と童話は、なによりも子供たちの心をとらえ、深い感動を与えています。そして子供たちが自らの生活を変え、正しい生き方に向かうよう励ましています。山口県や福岡県では、学校で教材として積極的に活用され子どもたちの心の成長の大きな糧となっています。
今回は数ある礒永童話の中から、とくに子供たちに人気の高い『とけた青鬼』『おんのろ物語』『鬼の子の角のお話』の3編を朗読劇やペープサートで演じます。
朗読劇という語りと実写投影、音響、照明のシンプルな形式は、青少年が本来持っている想像力を豊かにしています。そしてその物語は、困難にくじけず、仲間を思いやる心、人のために頑張る美しさとして大きなインパクトを与えたとの反響が相次いでいます。
会場や時間に合わせて、詩の朗読なども組み合わせて要望に沿った上演作品を用意します。
朗 読 劇
頭のてっぺっんにこぶのある一匹の鬼が、夜ふけの村の中を、えものをさがして歩いていました。大きな青鬼でした。
鬼の岩屋を出てから、もう、三日。今日という今日はえものをとって帰らないと、鬼の王様にしかられるばかりか、きびしい裁判が…。青コブはほんとうにずう体ばかりが大きくて、気の弱い鬼でした。
「こまったな」頭をかかえて村の中をうろうろするばかり。ついに「よし、あの家にふみこんで、男の子をさらってやろう」と思った青コブは、戸のすきまから様子をうかがい、聞き耳をたてました。母子の会話に青コブはうなだれ…そのときです。仲間の鬼たちに連れ戻されてしまいました。
「いいか、青コブ。きさまにいくじがないだけならきたえなおしてもやれるが、人間の子どもをさらおうとしたではないか。昔の鬼が人間のむすめをさらったり、赤んぼうを取ったりしたというが、そんな鬼は昔からいない。あれは人間の悪いやつらがじぶんたちの罪を鬼になすりつけるためにとばしたデタラメなのだ。鬼の風上にもおけぬひれつなやつ」。『ツメ切り・キバぬき・ツノもぎの刑』にかけられた青コブ。あと半日もたてばしぜんにとけて消えてしまうのが、のこされた運命でした。
いつのまにかふもとの村はずれに流れついた青コブ。祭りの太鼓の音が聞こえてきます。そこで知った村人たちの苦しみ…。
「けしからんッ!」生まれてはじめて青コブはハラをたてました。鬼の血はまだ流れていたのです。いままでになく青コブはふるい立ちました。なぜだか、じぶんでもわかりません。胸の中はなにかしら怒りでいっぱいになりました。そうです、ちょうどローソクが燃えつきるとき、大きな光で輝くように、あと数時間でとけてしまう青コブの鬼のいのちも、生まれてはじめて大きく燃え立ったのです。そこで青コブが村人たちのために残りのいのちをかけてしたことは…
大型ペープサート
森のはずれのあばら家に住む鬼の夫婦の間に子どもが生まれました。しかしその鬼の子にはいつまでたっても角が生えませんでした。鬼の夫婦はそのことをとても心配して毎晩ねむれませんでした。こっそり鎮守のお社にお参りしましたが…
「神様は人間の願いはかなえても、鬼お願いなんてきいてくれないんだ…」
ある雨降りの晩。あばら家の戸をコトンコトンとたたくものがありました。
「まあ、鹿さんじゃないの」
「…僕の角はたくさん枝がでていますから、どの角なりと切り取ってお役に立てて下さい、さあどうぞ」
すもう仲間の黒い大きな牛は「ひとつわしの角を進呈しようと思って…」
またしばらくたつと、一匹のいのししが土間にころげこみました。
「むすこさんに角がはえないっていうんでな、おれのキバをつかってくれよ…」
そのうち2本のタケノコが訪ねてきて…
「みんななんて親切なんだろう…なんてうかつだったんだ。そうだ、わしの角をむすこにやろう」
「いけません、それよりわたしの角を…」
そのとき、あばら家の天井からもれる雨のしずくが、ポトンポトンと鬼の子の頭の上に落ち…
朗 読 劇
へんな鬼でした。生まれた時からそうでした。たいていの鬼は生まれおちるとすぐ両手を振り上あげ「ワーッワーッ」と叫んで走り回るのに、その鬼は三月たってからようやく歩き出しました。
…へんな鬼はとにかくひとりで、だんだん鬼らしく育ちました。いつのまにか「おんのろ」というあだ名がつきました。のろまな鬼という意味です。
ある月のいい晩、仲間の鬼たちが「だんまり長者」をひっつかまえる相談に、おんのろを呼びます。ところがどうした事でしょう。その晩はおんのろを大将にしたてて長者を屋敷を襲おうというおったまげた相談でした。
「お、おれが、た、たいしょうになんかなれるものか」
「おんのろ、お前は自分がどれだけ強いか知らないんだ」
「おまえは千人力」
「おんのろ、おまえが大将だ」
困った困ったと思いながらふと中空にかかったお月さまを眺めますと、お月さまはやさしく笑って「やってみな」と言っているようすでした。
おんのろは七匹の鬼の先頭に立ってのろりのろりと山を下っていきました…
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